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2010年1月15日 (金)

横浜・明日への提言(89) 日本人のDNAを継承しよう 

89

横浜エフエム放送株式会社
代表取締役社長 藤木幸夫

(著者紹介:現在、藤木企業株式会社 取締役会長、株式会社横浜スタジアム取締役会長、横浜港運協会会長、神奈川県銃器薬物水際排除推進協議会会長、神奈川県野球協議会会長、社会福祉法人希望更生会理事長、小さな親切運動神奈川県本部代表、がん医療と患者・家族を支援する会会長等の役職にあり、平成元年4月に藍綬褒章受章、平成10年11月に横浜文化賞を受賞。)

 アメリカは国民の5パーセントが国の富を独占する格差大国だが、民族的なDNAからするとその5パーセントの大半は伝統的なアメリカ人ではないという。では、どういうのが伝統的アメリカ人の典型かというと『若草物語』に描かれた家族像なのだそうだ。ディズニーランドにアメリカ人が好んで足を運ぶのは古きよきアメリカへのノスタルジーからなのだという。
 そういうものかもしれないという程度に専門家の話を当座は聞き流したが、この不景気にもかかわらず日本のディズニーランドがますます盛況となると、では日本人はなんでそんなに行きたがるのかと真剣に考えざるを得なくなってしまう。
 太古の日本列島は一時期アジア大陸とつながっていたそうだが、最後の氷河期が終わり、縄文時代の7、8千年は分離し孤立していたといわれている。日本人のDNAが形成されたとするなら、恐らくこの間ではないだろうか。しかし、それでは、日本人のDNAがどのようなものであったか、類推するにしても判断材料が乏しすぎる。そこで、鎖国250年の江戸時代をもとに考えてみることにした。
 江戸時代は鎖国だから自給自足であり、縄文時代と条件が一致する。大幅に異なるのが加工技術と道具の進歩だが、江戸時代の職人は自分の手に合った道具づくりから始めなければならなかったから、今日と比較した場合にはむしろ縄文に近いだろう。
 毎日の食卓を限られた主食と副食で賄うとしたら、どういう問題が起きるだろうか。変わり映えしないからいつかは飽きがくる。そこで、まず旬のものが尊重された。しかし、それにも限界がある。季節の制約を受ける限られた食材で飽きない食事を一年365日実現していくには味噌、醤油などの調味料に加えて、調理法のバリエーションの確立が必要になる。それはまさに体系といえるほどのもので、素材、調味料、調理法を組み合わせた江戸時代のノウハウが再現できたら、現代の料理人は恐れ入ってひれ伏すだろうとさえいわれている。
 工芸関係についても同じことがいえそうだ。日本が経済大国になれたのは日本のものづくりが技術的に世界を席巻した結果であった。それが今は世界並になっているらしい。それだけでも外国のエンジニアは驚いて、「今、日本に何が起きているんだ」と首を傾げていると聞く。
 孤立した島国、鎖国状態で日本人が生き抜くには義理・人情・恩返し(GNO)の精神的な体系化も必要だったろう。GNOを下敷きにして『忠臣蔵』『南総里見八犬伝』などの時代物、『曽根崎心中』『心中天網島』『東海道四谷怪談』などの世話物として結実をみた。物の問題は創意工夫で解決がつくが、互助結束の精神を伴わなかったら社会的な広がりを持たなかった。日本人の悪い面もあるにはあるが、まずよい面から確実にものにしていくことが、DNA再発見、復活につながるはずである。そういう意味で今年も機会があればGNOを訴えていきたい。