ヨコハマ ストーリー 第41回 「私の関東の富士見百景物語」
魅力あふれる街、ヨコハマ。
この街が世界の表舞台に登場したのは今からおよそ150年前。ペリー艦隊が来航した時からその歩みは始まりました。そして今もヨコハマはユニークな街であり続けています。そんなヨコハマの由緒あるスポットを舞台に、物語と音楽で紡いでいく「ヨコハマ・ストーリー」きょうは、「私の関東の富士見百景・松の内公園馬の背遊歩道物語」
富士山の眺望・ながめをブランドに―――
富士山の景観を生かしたまちづくりを進める国土交通省は「関東の富士見百景」を選定した。富士山の見晴らしがよいことはもちろんだが、だれにでも自由に利用できる公共機関、周辺地域で景観の保全活用の関心が高いなど、当然だが条件は厳しい。横浜でもいくつか選ばれている。「鶴見川からの富士山」「横浜港大さん橋国際客船ターミナル」そして,「松の内公園馬の背遊歩道」である。横浜生まれ,横浜育ちの私だが聞いたこともない。京浜急行・杉田駅から歩いて15分、住所は磯子区中原とある。
新春のすんだ空気の中で富士山が映えて見える。関東の富士見百景に選ばれただけに、まるで浮世絵の絵を切り取ったような富士山だった。
「松の内公園・馬の背遊歩道は」と、杉田駅の近くで何人かに聞いたのだが
誰も知らない。まだここは知られざる名所なのだ。1月にしては暖かく、陽だまりに置かれたベンチに座っていると眠たくなるほどだった。富士山の近くを1機の飛行機が行く。
ずいぶん前のことだがラジオから「空に,ライオンが,雪だるまが、飛んでいる」と久米明さんの味わいぶかいナレーションがきこえてきた。
飛行機に乗せられたライオン。雪だるまは、北国の子供たちから雪の降らない南の国の子供たちへのプレゼントだった。私はしばらくラジオに聞き入り、普段見ることもない空をしみじみと見上げた。
番組がどのようなものだったのかもう忘れてしまった。覚えているのは、空とぶライオン、雪だるまに、番組のラストで登場した糸井重里さん。
「空にコピーをつけるのですか、うーん,あまり空見ないですよね・・・」
かなりの間があって、糸井さんのコピーは解りやすく覚えやすかった。
「ルック・アット・ミー、私ですよ,空ですよ」
番組を聞き終えた後、「私ですよ,空ですよ」が頭に残ってしばらく空を見上げる。いつもよりゆったりとした気分の私がいた。あれから何年が経つのだろう。「最近、空を見上げたことないな」ひとりごちる。
富士山とは反対方向、東方の空、房総半島の上を飛行機が行く。ベンチを離れ、うっそうとした木々に囲まれた階段を登るとここが馬の背遊歩道なのだろう。東に房総半島、道を隔てて南に鎌倉、北にみなとみらい地区、パノラマビューが楽しめる。山頂に雪を抱いた富士山はさらに優雅な姿を見せている。富士のように雄大ですばらしい1年に、たまには「空を」と思い公園をあとにした。
今日の「松の内公園馬の背遊歩道物語」いかがでしたか。出演、小林節子 脚本、大多田純でお送りいたしました。「ヨコハマ・ストーリー」また来週をお楽しみに。