ヨコハマ ストーリー 第11回 「山手界隈散歩物語」
魅力あふれる街、ヨコハマ。
この街が、世界の表舞台に登場したのは、今からおよそ150年前。ペリー艦隊が来航したそのときから、歩みは始まりました。そして今もヨコハマは、ユニークな街であり続けています。そんなヨコハマの由緒あるスポットを舞台に、物語と音楽で紡いでいく『ヨコハマ・ストリー』今日は「山手界隈散歩物語」
開港後、欧米から外交官や商人たちが横浜に居住すると、すぐに馬や二輪馬車を購入して道路の新設を望むようになった。こうして、山手・根岸・本牧の景勝地を馬や馬車で巡る散策路ができた。これが「外国人遊歩新道」である。
地蔵坂が出発点。明治天皇が根岸競馬場への行幸で何度も登った坂だ。根岸競馬場から不動坂を下りて、本牧へと到る。そして、山手の山すそから小港の十二天に向かう道と、山手公園から地蔵坂へと戻る全長およそ9キロの道だった。一部を除き、ほとんどが生活道路や幹線道路としてその姿を残している。
友人と、石川町から間門まで、外国人遊歩新道をたどってみようということになった。お天気は快晴。用意のいい彼女は、日傘を手にしている。風が心地よく頬をかすめていった。
石川町駅からすぐに地蔵坂だ。山元町商店街を抜ける。米軍施設の先に根岸森林公園がある。競馬場を思い出させる雰囲気が、今も残っている。
緑の匂いを感じていると、友人が「ちょっと、相談があるんだけど」と私を見た。遠くで、鳥の鳴く声が聞こえた。彼女は、相談したいことがあるときはいつも私を散歩に誘う。夫のこと、ひとり娘の就職のこと。ひとしきり話すと、いつもさばさばと帰っていく。でも今日は、少し様子が違う。喉が渇いたので、『ドルフィン』でお茶しましょう、というと、彼女は頷いた。
彼女の話は、こうだ。旦那さんが、ある日プレゼントを持って帰ってきた。デパートでプラチナジュエリーのフェアをやっていたから、つい買ってしまった、と素敵なネックレスを手渡す。結婚以来、そんなことは一度もなかった。誕生日でさえ、ファミレスですます人なのだ。これは怪しいと彼女は言う。
「何かやましいことがあるに違いない。どう思う?」と聞かれて私は笑ってしまった。
「素直に喜べばいいじゃない。あなたの旦那さんにかぎって、そんなことないわよ」と言った。店を出て、不動坂から遠く海を眺めた。友人の胸には、しっかりとプラチナのネックレスが輝いていた。「今日は、相談ではなく、のろけだったのね」と心の中でつぶやいた。
今日の「山手界隈散歩物語」はいかがでしたか。出演、小林 節子 脚本、北阪昌人でお送りしました。「ヨコハマ・ストーリー」また来週をお楽しみに・・・