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2006年10月20日 (金)

ヨコハマ ストーリー  第30回 「横浜美術館めぐり物語」

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ヨコハマストーリーは、FMヨコハマで2005.4.5~2006.3.26(毎週日曜日 出演:小林節子)に放送された番組の脚本抄録です。

魅力あふれる街、ヨコハマ。
この街が、世界の表舞台に登場したのは、今からおよそ150年前。ペリー艦隊が来航したときから、その歩みは始まりました。そして今もヨコハマは、ユニークな街であり続けています。そんなヨコハマの由緒あるスポットを舞台に、
物語と音楽で紡いでいく『ヨコハマ・ストーリー』。今日は「横浜美術館めぐり物語」

横浜には、特徴的な美術館が二つある。ひとつは1989年開設の横浜美術館。19世紀後半以降の美術作品を中心に、ダリ、ミロ、ピカソ、セザンヌ等。そして幕末、明治以来の横浜にゆかりの深い作家の作品が幅広く集められている。写真伝来の地として、写真コレクションも充実している。「みる」「つくる」「まなぶ」の連携を基本方針にする美術館らしく、ワークショップや実技指導など、市民の芸術活動の基点になっている。もうひとつは、そごう美術館。1985年9月に開店したそごう横浜店6階のこの美術館は、百貨店としては日本で初めて博物館法に基づく登録を行い、本格的な美術館として開設された。その企画展覧会には定評があり、専門家や海外からも高い評価を受けている。

 秋風に誘われて、美術の香りに触れたくなった。
横浜美術館で気になる展覧会をやっていた。リ・ウファンという韓国の作家の作品展だ。「余白の芸術」と名づけられたポスターに心ひかれた。日本の現代芸術に多大な影響を与えたという今年69歳になる作家に興味を持った。
 みなとみらいも、秋の装いに包まれていた。空は高く青い。
 美術館に入るときの、独特の緊張感が好きだ。大きな期待とかすかな不安。静まりかえった館内にもれるひそやかな声。そこに繰り広げられる初めて見る空間が私をいざなう。
 「余白の芸術」と題された、リ・ウファンの展覧会は、素晴らしかった。これを彫刻とよんでいいのだろうか。そのオブジェは、大きな石とただの板があるばかり。まるで、なにもないことを知らしめるような空間の演出。壁のキャンバスには、わずかな筆の跡があるだけ。シンプルで、何もない空間のすがすがしさが心地よかった。リ・ファンは、「作らない」で「作ること」を課題にしてきたという。真の芸術とは、見ている人に広がりを見せられる作品だけだと彼は考えたのだろう。手を加えるのは、ほんの少しだけ。あとには、ただ余白が広がっている。その余白から人々は何かを感じる。壊しては創る。ものをたくさん溜め込む。その先には何があるのだろう、と作品は問いかける。
 私は、余白を持っているだろうか。余白を楽しむゆとりがあるだろうか。そんな思いを抱きながら、美術館をあとにした。

今日の「私の横浜美術館めぐり物語」いかがでしたか?出演、小林節子 脚本、北阪昌人でお送りいたしました。
「ヨコハマ・ストーリー」また来週をお楽しみに・・・