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2009年2月

2009年2月28日 (土)

横浜・明日への提言(69)開国・開港 Y150は感謝祭 

69

横浜エフエム放送株式会社
代表取締役社長 藤木幸夫

(著者紹介:現在、藤木企業株式会社 取締役会長兼社長、 株式会社横浜スタジアム取締役会長、横浜港運協会会長、神奈川県銃器薬物水際排除推進協議会会長、神奈川県野球協議会会長、社会福祉法人希望更生会理事長、小さな親切運動神奈川県本部代表、がん医療と患者・家族を支援する会会長等の役職にあり、平成元年4月に藍綬褒章受章、平成10年11月に横浜文化賞を受賞。)   

 そろそろ横浜開港150周年記念事業である開国博Y150について言及しないといけないだろう。横浜開港150周年の節目がいきなり経済的に波乱の幕開けとなったわけだが、こういうときだからこそ各人の潜在能力、底力が問われるわけである。むしろ、底力を見せる年と銘打ってもよいくらいだ。
 それにはやっぱり反省が伴わなければならない。失敗が許されるのは反省が次の成長のバネとして働くからである。そういう意味でも反省は大事。では、何から反省するか。
 横浜は神奈川県の県庁所在地で、政令指定都市で、人口370万を抱えた東京都に次ぐ2番目の大都市になった。なったには違いないが、開港される150年以前はたかだか100戸を数える程度の漁村にすぎなかった。それなのに誰の世話にもならずこうなったといわんばかりに今日にあぐらをかいておりはしまいか。
 だれのお陰で、どういうふうに今日の横浜に育ったのか。わかっているのは生糸や茶などが全国の生産地から運び込まれてきて輸出され、それが産業となり、お陰で日本を代表する開港都市が生まれたといった程度だ。それも発端となった表面的な現象だけで、全国各地との連携を含めた前後の検証をなおざりにしてきた嫌いがありはしまいか。
 しかし、今、それをいっても間に合うことではないから、大事なことを怠ってきたことへの反省の開国博、生糸や茶などの輸出品を持ち込んでくれた全国の産地に対し感謝を深める開国博、せめてそういう意識ぐらい持ちたいものだ。
 過去に対しては感謝と反省、将来のためにはこれまで築いた物心両面の財産を守る。ミナト・ヨコハマを守る。日本を守る。何もなかった寒村をここまでして貰った感謝の気持ちで今年をそのきっかけにすることも、目には見えないけれども開国博の大事な心得だろう。
 百年に一度と形容される経済危機が図らずも開国博こそ精神的な紐帯を強固にする恰好の機会だと知らしてくれたといえなくもない。たとえ有志だけでも結束して、ミナト・ヨコハマを守ることが日本全国の家庭の冷蔵庫の中身を確保することにつながるのと同じように、横浜を守ることが日本を立ち直らせることに結びつくような何かを考える。智恵を合わせ相談して横浜ならではの効果的な答えを出したいものである。

2009年2月14日 (土)

横浜・明日への提言(68) 倒産もなく、リストラもなく

68

横浜エフエム放送株式会社
代表取締役社長 藤木幸夫

(著者紹介:現在、藤木企業株式会社 取締役会長兼社長、 株式会社横浜スタジアム取締役会長、横浜港運協会会長、神奈川県銃器薬物水際排除推進協議会会長、神奈川県野球協議会会長、社会福祉法人希望更生会理事長、小さな親切運動神奈川県本部代表、がん医療と患者・家族を支援する会会長等の役職にあり、平成元年4月に藍綬褒章受章、平成10年11月に横浜文化賞を受賞。)
   
 前回述べたように近代民主主義社会にあっては雇用こそ経済活動の基本だというのが私の変わらぬ信念である。人間一人生きていくのが経済活動。家族が一緒に暮らすことも経済活動。地域や国を含めてみんなが生計を営むのが経済活動。そうした経済活動の基本中の基本が雇用だということ。つまり、労働が伴わなければ生産はない。雇用をなくすことは経済活動をやめることだ。資本主義社会であっても、社会主義社会であってもその基本は変わらない。ところが、昨年前半まで勝ち組を謳歌していた日本を代表するトップ企業が、年の暮れを目前に率先して派遣社員をリストラした。これはどういうことなのだ。
 それぐらい今の日本は大変なんだということを理由にしたいのだろうが、ちょっと待てよといいたい。そうなった原因、そうしてしまった理由は何なんだ。それを反省しないで結果だけ理由にするのは説明として間違いだし、虫がよすぎる。こうなった一番の原因は労働を人件費でなく物件費にして、いつでも簡単に手に入って、いつでもたやすく手放せるようにしてしまったことだ。
 大変だと連呼する日本のトップ企業に限らず、私が関係するFMヨコハマも、ミナト・ヨコハマもこれから大変だ。港湾関係を例に取れば仕事がどんどん減っている。これからも減るだろう。しかし、リストラは一切やらない。倒産も出さない。これが過去の実績をきちんと踏まえたうえでの不退転の決意である。
 私は横浜港運協会の会長として10年も前から利益より雇用を大事にする方針を立て、ずっと貫いてきた。横浜港運協会にはおよそ250社が加盟していて、1万人近い従業員が働いているのだが、私はその250社のトップに「どんなことがあっても社員のクビを切らないように」とお願いしてきた。自慢でいうのではなく、現在進行形の現象と正反対の実例として挙げるのだが、過去10年間、リストラは250社で一度として行われなかった。そのために倒産した会社も皆無だった。これは偽りのない厳然たる事実である。
 だから、日本のトップ企業の経営陣も、その気になれば同じようにやれる。利益至上主義を雇用至上主義に転換するだけでよいのだ。「構造改革なくして成長なし」というのは間違いだったと現実が証明してくれているのだから、賢いトップなら「雇用を守らずして成長なし」に頭を切り替えるはずだ。雇用が守られれば経済活動はそれなりに維持されて底を打つのも速いわけで、日本経済の立ち直りもそれだけ早くなり、いわれるような「百年に一度の危機」までは発展しない。
 経営者の方針転換と従業員のポテンシャル発揮、これをワンセットにするのが「百年に一度の危機」の処方箋である。あとはやるかどうか、トップの決断力と実行力にかかっている。