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2008年12月14日 (日)

横浜・明日への提言(64)世界は護送船団方式に向かう

64

横浜エフエム放送株式会社
代表取締役社長 藤木幸夫

(著者紹介:現在、藤木企業株式会社 取締役会長兼社長、 株式会社横浜スタジアム取締役会長、横浜港運協会会長、神奈川県銃器薬物水際排除推進協議会会長、神奈川県野球協議会会長、社会福祉法人希望更生会理事長、小さな親切運動神奈川県本部代表、がん医療と患者・家族を支援する会会長等の役職にあり、平成元年4月に藍綬褒章受章、平成10年11月に横浜文化賞を受賞。)   

 年の暮れを迎えて例年なら来年のことばかり考えて過ぎ去ったことなどあまり思い出すことはないのだが、ちょうど一年前にこのブログで述べた所感を今年ほど鮮やかに思い出したことはない。
 さて、ところで、小さな政府が叫ばれるときは大きな政府を考える、規制緩和が主流のときは規制強化の観点から世の中の現象を見つめ直すといった具合に、私は常に反対の概念を手当てすることを持論のようにしている。当時から世界の趨勢はサブプライムローン問題が大きな懸念材料として取り沙汰されていたものの、弱肉強食の競争原理一色だったから、私は持論に従って「ベニスの商人」的競争原理に対抗し、GNO(義理・人情・恩返し)精神を高く掲げて「ミナト・ヨコハマは護送船団方式でいく」と宣言した。
 また、金融は実体経済を活性化させる縁の下の力持ちに徹してこそ実業たり得るし、マネーゲームに走ったら株券などただの紙切れにすぎなくなってしまうとあらゆる機会に主張してきた。
 今年前半までは「護送船団方式なんかもう骨董品」という見方をして私の宣言を時代錯誤と受け取る向きが多かったと思う。ところが、9月にアメリカの証券大手リーマン・ブラザーズが破綻、同国の金融危機が世界に飛び火して、百年に一度の「世界同時恐慌」とまでいわれる一大波乱を招いた。
 詳しい説明は省くが、11月半ば、世界的金融危機の対策を話し合うために先進国に新興国を加えた20の国と地域の首脳がワシントンに集まり、金融サミットを開催したばかりである。発表された宣言骨子の一つに「金融と金融機関のすべてを規制の対象とする」(要約)という内容が含まれていた。
 先進国に新興国を加えた20の国と地域の首脳が共通のテーマで協調し、助け合う目的で一堂に会すること自体が「護送船団方式」への回帰である。競争一辺倒は人の心を荒廃させ世の中を殺伐にしてしまったが、協力・協調の対策づくりが進むにつれてGNO精神が根づき、新しい秩序への一ページが開かれるチャンスの芽が育つだろう。
 すなわち、市場原理一辺倒の時代にはまったく不可能に思われた世界再生のチャンスが、百年に一度のピンチのお陰で目の前にあるわけで、それを思えば不景気に立ち向かう気力もわいてくる。
 また、日本がリーダーシップを発揮するとしたら不良債権処理のノウハウ伝授などではなく、かつての日本の「護送船団方式いかにありしか」を世界に向かって説くことだ。どのように説くかは来る新年の年頭所感で詳しく述べることにして、「常に反対の概念を手当てせよ」という持論が正しかったことが確かめられたことを報告して提言の一年の締めくくりとしたい。
 みなさん、よいお年を。