横浜・明日への提言(46) 大航海時代の再来に対処しよう
代表取締役社長 藤木幸夫
(著者紹介:現在、藤木企業株式会社 取締役会長兼社長、 株式会社横浜スタジアム取締役会長、横浜港運協会会長、神奈川県銃器薬物水際排除推進協議会会長、神奈川県野球協議会会長、社会福祉法人希望更生会理事長、小さな親切運動神奈川県本部代表、がん医療と患者・家族を支援する会会長等の役職にあり、平成元年4月に藍綬褒章受章、平成10年11月に横浜文化賞を受賞。)
コロンブスがアメリカ大陸を発見し、マゼランがマゼラン海峡を発見して船で世界一周を成し遂げ、海運の時代の幕開けを演出した時代を大航海時代と呼ぶ。大洋に隔てられてきた世界の国々が初めて一つにつながった結果、船を持つ者が富を手に入れ、海軍力を持つ国が海を支配し覇権を握る時代になった。ただし、あの時代、未知の土地を発見するには冒険が伴い、生死を託すロマンの香りが漂っていた。
はるかに時が流れ、今度はインターネットという情報ネットワークの端末機が世界の隅々に張り巡らされた結果、パソコンのキーボードを操作するだけで世界中のどこからでも最新情報を入手できるという新手の大航海時代が到来した。
かつての大航海時代は世界中の物を買い占めるほどの金を持ったとしても、冒険を伴う航海をしないで富を手に入れることは不可能だった。
ところが、新手の大航海時代は金さえあれば相手に姿を見られないで支配し、世界を牛耳ることができる。人類がほんの一握りの人間が持つ金に支配される時代になったわけだ。
それだけならよいとか悪いとかいう段階ではないのだが、市場原理だのグローバリゼーションなど世界公認のウイルスを蔓延させるとなると大問題である。
世界の資本主義はアダム・スミスが唱えた需要と供給のバランスを大原則としてダイナミズムを発揮してきたのだが、投機マネー、オイルマネーのような国際金融資本が世界の市場を支配するようになってから怪しくなった。妖怪資本はいつどこに恣意的に現れるかわからないから対処がむずかしい。
今、原油市場に何が起きているか。かつて原油価格はメジャー(国際石油資本)と呼ばれる欧米系の大手石油会社が原油買い取り価格を決定して産油国に従わせた。油田の開発が地球規模で進み、供給がだぶついて価格が下がると、メジャーに対抗してOPEC(石油輸出国機構)が価格決定権を奪い取った。しかし、昨今の1バレル100ドルといった狂乱価格は需給などお構いなしの利ざやかせぎの投機マネーの流入が招いた結果で、メジャーやOPECの価格決定力を否定するものだ。つまり、原油市場は機能不全に陥っているわけで、「もはや資本主義の時代ではない」というほかない現象である。
実体のある需給バランスを大原則とする健全な資本主義を取り戻すにはどうしたらよいか。ベニスの商人化した国際金融資本を規制する以外に方策はないのではないか。それこそ政治の役割なのだが、われわれとしても政治家を後押しするために毅然とした規制を支持する姿勢を鮮明に打ち出し、声高に主張すべきときがきているのではないか。