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2007年5月14日 (月)

横浜・明日への提言(28) 過去を土台に今日を築く

28

横浜エフエム放送株式会社
代表取締役社長 藤木幸夫

(著者紹介:現在、藤木企業株式会社 取締役会長兼社長、 株式会社横浜スタジアム取締役会長、横浜港運協会会長、神奈川県銃器薬物水際排除推進協議会会長、神奈川県野球協議会会長、社会福祉法人希望更生会理事長、小さな親切運動神奈川県本部代表、がん医療と患者・家族を支援する会会長等の役職にあり、平成元年4月に藍綬褒章受章、平成10年11月に横浜文化賞を受賞。)

 私は横浜港運協会の会長を務める関係で講演を頼まれることが多い。頼まれるとミナト・ヨコハマについて語らせて欲しいとお願いすることにしている。テーマは変わらないが、思いついたことを話すから、そのたびに違う内容がいつも加わる。自分で話して「あっ」と驚くことも少なくない。
 ヨーロッパなどへ行くとあちこちの都市に銅像が立っている。過去という台の上に今があることを忘れないためである。学校の教科書にも外国に攻められたとき国や街を守った将軍、兵士の美談がたくさん書かれている。
 一方、日本には「水に流す」という言葉がある。
「そんなことはもういい、すべて水に流して新しく始めよう」
 これは日本人のよさでもあるが同時に玉に疵で、過去を忘れてしまう悪い面を併せ持つ。しこりをいつまでも残す過去の感情は水に流してしまったほうがよいが、先輩たちが苦労して築いた過去の事実まで忘れてはいけない。過去の事実に今日の現実を積み重ねてこそ明日がある。そんなことを話して帰ってから、私は「あっ」という思いで気がついた。日本人のよい面を残しながら悪い面をヨーロッパ人のよい面に置き換えたらどうなるか。
 新しいことを始めるためには必ずしも過去にこだわらなくていい。しかし、過去の大事なことはしっかり認識して確実に継承していくと、実にすばらしい国民性に結びつく。
 アメリカ人は資本主義、競争原理というシングルイシューに支配されすぎているし、ヨーロッパ人は過去を大切にするあまり感情をいつまでも引きずりがちだ。日本人がまず参考にするのはヨーロッパやアメリカではなく過去の日本、それも身近な先輩達ではないか。
 ところで、とある講演会でアメリカの歴史学者が明治維新を評して「日本には革命がない、国体が一度も変わったことがない、世界史上からも稀有のことである」といった言葉を紹介したところ、後日、ある歴史学者から「気づかなかった、よいことを教えてもらった」というお礼の手紙を頂戴した。
 世界でも稀有ということは世界最高ということではないだろうか。最高のものが土台にあって流行を支えているわけで、不易と流行、温故知新、いろいろないい方があるが、これまでの日本人は「温故不易」に当たる部分に世界最高のものを持つことを誇りにしてきた。
 ところが、近頃の改革はアメリカナイズへ傾斜するあまり過去の日本はすべて古くてぶっこわさないといけないものと錯覚しているのではないかと危なっかしく思うほど、純粋でひたむきである。いつの時代でも改革というものは正しい目的、確実な見通しのもと「過去を土台に明日を築く」姿勢を貫く必要性がある。そろそろ一服して「改革ごっこ」そのものが日本と国民のためになるかどうか、検討するゆとりを取り戻すときではないか。