ヨコハマ ストーリー 第24回 「私の元町仲通り物語」
魅力あふれる街、ヨコハマ。
この街が、世界の表舞台に登場したのは、今からおよそ150年前。ペリー艦隊が来航したときから、その歩みは始まりました。そして今もヨコハマは、ユニークな街であり続けています。そんなヨコハマの由緒あるスポットを舞台に、物語と音楽で紡いでいく『ヨコハマ・ストーリー』。今日は「私の元町仲通り物語」
横浜港の開港で、外国人居留地から移り住んだ人々が造った「元町」は欧米人のショッピング街だった。
その華やかな店を支えた職人の工場、そして彼らの住居があった場所、それが元町からひとつ山手側に入った「仲通り」。表通りの賑やかさとは、何処か違った静かな空気。この通りには、今も個性的な店やレストランが並んでいる。
昨年末、仲通りを中心に、代官坂、汐汲坂など、約130の商店主らが商店街振興組合『元町クラフトマンシップ・ストリート』を結成した。物づくりの伝統を今に生かし、作り手が売り手になる「製販一体」を目指す。お客と直接相談しながら商品を作るという、作り手と買い手との距離の近さも、仲通りの伝統のひとつかもしれない。
元町、仲通りに、女学校時代の友人を訪ねた。彼女は、山手の学校を出たあと、しばらく横浜を離れていたが、何年か前に、また戻ってきたのだという。今は、仲通りで、工房を持っている。彫金のアクセサリーや花器は、とても評判がいいらしい。
みなとみらい線、元町・中華街駅から、ウチキパンを右に折れると仲通りだ。「香炉庵」の先に伸びているが代官坂。「霧笛楼」を左に見ながらしばらく行くと、汐汲坂がある。風に秋の匂いが混じってきたように思う。この季節には、職人の街が良く似合う。
目指す工房を見つけるより前に、カンカンカンと銀板を叩く音が聞こえた。
彫金の工房を営む友人は、満面の笑みで迎えてくれた。その少女のような笑顔を見ていたら、こちらまで嬉しくなった。
彼女の作品は、どれも素晴らしかった。力強い直線が作り出す大胆なデザインの花器があったかと思うと、奇跡的な繊細さが紡いだアクセサリーもあった。伝統工芸日本金工展などで多くの賞をもらったという。
「店にいて、お客さんと話すと、アイデアが生まれてくるのよ。自分の中にあるものなんて、たかがしれてるでしょ。まわりの人から、ヒントをもらって形にするの」と彼女は言った。女学校時代のおとなしい印象はどこかに消えていた。
「自分でつくったものを、そのまま売る。素敵なことよ」という言葉が、胸に残った。
ここに移り住むまでの彼女の人生は、わからない。でも、無心で銀板を叩く姿を見ていると、彼女の生きてきた全てが、作品に昇華されているように感じた。カンカンカンという音が、秋の空に心地よく響き渡った。
今日の「私の元町仲通り物語」いかがでしたか?出演、小林 節子 脚本、北阪昌人でお送りいたしました。「ヨコハマ・ストーリー」また来週をお楽しみに・・・