ヨコハマ ストーリー 第19回 「私の根岸森林公園物語」
魅力あふれる街、ヨコハマ。
この街が世界の表舞台に登場したのは今からおよそ150年前。ペリー艦隊が来航した時からその歩みは始まりました。そして今もヨコハマはユニークな街であり続けています。そんなヨコハマの由緒あるスポットを舞台に、物語と音楽で紡いでいく「ヨコハマ・ストーリー」今日は、『私の根岸森林公園物語』。
1867年、日本で初めて競馬が行われた根岸競馬場。その跡地に開かれた根岸森林公園。根岸競馬場は戦争で閉鎖、戦後は米軍に接収された。ゴルフ場やモータープールになっていたが、1969年に一部が返還され、1977年に公園としてオープンした。
この公園の魅力はなだらかな丘と、横浜スタジアムが五個分という敷地いっぱいに広がる芝生。多くの樹木による四季折々の景観も素晴らしい。隣接する根岸競馬記念公苑には、馬の博物館、ポニーセンターがあり世界でも珍しい馬だけの総合博物館である。根岸競馬場の歴史や、暮らしの中の馬文化など豊富な資料が揃っている。
本棚を整理していたら、妙なものをみつけた。古ぼけた5年運用日記。17歳の時に、突然、思いたって書き始めたのだ。最後までやり遂げないと気の済まない性格だが、不思議なことに、その5年の運用日記は4年8ヶ月と13日で終わっている。
ページをめくっていくと一枚の写真が出てきた。父と私が左右に分かれ、一頭の馬の手綱をとっている。父の愛馬・ヤマフジが、大井競馬場で優勝した時のスナップだ。
父は競馬が好きで、周りの反対をも押し切って馬主になったことがある。だが、馬主生活はそう長くは続かなかった。馬のオーナーとしての経済的な負担はかなりのものだったのだろう。愛馬ヤマフジ優勝のスナップは、私達にとっても古き良き時代のひとこまだ。
父は根岸森林公園を散歩するのが好きだった。丘の上には、古いレンガ造りの館がそびえている。開設以来立ち続ける競馬場跡の観覧スタンド。
昭和16年、ここで四歳馬のレースが行われ、優勝したのがセントライト。セントライトは、東京と京都でも勝って日本初の三冠馬となった。
「もし戦争がなかったら、ここでクラシックレースをやっていたんだ」父は残念そうに、よくそう言っていた。
もし、戦争がなかったらで、ふと思い出した。日記が4年と8ヶ月あまりで終わっているのは、私にとっての淡い、切ない恋の戦いの終戦。「青春って、純で無邪気で、ムキになってしまうものだったじゃない。」とスナップ写真の中の二十歳の私が微笑みかけてきた。
今日の、『私の根岸森林公園物語』いかがでしたか。出演、小林節子 脚本、大多田純でお送りいたしました。「ヨコハマ・ストーリー」また来週をお楽しみに・・・