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2010年3月31日 (水)

横浜・明日への提言(94)世代交代したらどうなるの? 

94

横浜エフエム放送株式会社
代表取締役社長 藤木幸夫

(著者紹介:現在、藤木企業株式会社 取締役会長、株式会社横浜スタジアム取締役会長、横浜港運協会会長、神奈川県銃器薬物水際排除推進協議会会長、神奈川県野球協議会会長、社会福祉法人希望更生会理事長、小さな親切運動神奈川県本部代表、がん医療と患者・家族を支援する会会長等の役職にあり、平成元年4月に藍綬褒章受章、平成10年11月に横浜文化賞を受賞。)

 何かを批判する場合、「俺の考えが正しい。違ったことをいうおまえの考えは間違っている」というようないい方が当たり前のようになりだした。そういうのを「バイアス(先入観)思考というんだ」と教えてくれた人がいた。自分が正しいという考えに凝り固まってしまうと、学者だろうが、研究者だろうが、検事だろうが、裁判官だろうが、まったく物事が見えなくなってしまうのだそうだ。
 そういえばいたな、そんなのが・・・・・・。
 まず市場原理主義の正しさを証明してから物差しとして用い、抵抗する側の主張を論駁するのが普通なのだが、かの学者政治家はいきなり市場原理主義を物差しに用いてダンビラみたいに振り回した。市場原理主義が正しい、構造改革しないといけないんだ、抵抗する主張はすべて間違いだ。
 最近は若手・中堅の政治家が似たようなことをやり出した。
「兎に角、世代交代だ。改革をやり遂げるには、それっきゃない」
 一例をあげると、世代交代は善なのだから古い自民党はいけないという論法になるらしい。現実には「古い自民党時代のほうが政治はしっかり行なわれていた」という面もおおいと思うが、そういうふうに全体を客観的に見ようとしないで揚げ足を取る類の批判ばかりやって、いきなり「だから」とくる。だけど、世代交代は放っておいても行われる。あえてスピードを上げるからには、何を、どうして、どうやって、やったらこうなる、というシナリオがなければならないのだが、肝腎なシナリオがどうも行方不明なようである。改革自体も名前と掛け声ばかりで中身は白紙に近い。それで世の中がよくなるなら結構だが、正直いって、もう、うんざりだ。
 世代交代は必要だと思うし待ちこがれてもいるが、任せたくなるような若い世代がなかなか育ってこない。おそらくバイアス思考が進歩と成長を妨げてきたのだろう。
 と、なると、構造改革政治の弊害は日本の中産階級を解体したのみならず、次の世代の進歩と成長まで止めてしまったことになるのではないか。そういえば、バイアス思考を嘆いた人はこんなこともいっていたっけ。
「消費税は自分がいる間は上げない、不都合はみんな先送り。拉致被害者帰国のようにすぐ得点になりそうなよいとこ取りばかりやりつくして、ハイ、さようなら。これじゃあ、あとをだれがやってもうまくいかないよ」
 振り返ってみると、われわれも知らない間にバイアス思考に陥って今の日本の本当の病巣が見えなくなっているのではないか。世代交代が単に年齢的に若返らせるだけなら時の流れに任せたほうがよい。