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2009年9月 2日 (水)

横浜・明日への提言(80)マスコミはもっと巨視に徹すべし

80

横浜エフエム放送株式会社
代表取締役社長 藤木幸夫

(著者紹介:現在、藤木企業株式会社 取締役会長、株式会社横浜スタジアム取締役会長、横浜港運協会会長、神奈川県銃器薬物水際排除推進協議会会長、神奈川県野球協議会会長、社会福祉法人希望更生会理事長、小さな親切運動神奈川県本部代表、がん医療と患者・家族を支援する会会長等の役職にあり、平成元年4月に藍綬褒章受章、平成10年11月に横浜文化賞を受賞。)

 今回の総選挙は大方のマスコミが予想した通りの結果になった。いずれにしても、想定の範囲内であった。そんなことより、新聞やテレビが「自民か、民主か」の二者択一で突っ走った直前の事実が記憶に新しい。
 テレビが茶の間に入り込み、一軒に一台から一人に一台まで普及しつくし子供部屋まで占領するに立ち至った。いきなり、なぜ、こんなことをいい出すのかというと、テレビを用いた詳細面接調査を数多くこなした専門家が「テレビにはステイタス付与機能がある」といっているからである。たとえば、テレビCMの効力は商品を売り込む以前にメーカーに対する信頼感を消費者に植えつけるのだそうだ。だから、結果として商品が売れるのだという。
 視聴者はテレビCMをつくるのに莫大な費用がかかり、テレビで放映するにはさらに巨額の予算が必要だとすでに知っていて、それゆえに「テレビでCMをやるようなメーカーの商品なら安心して買える」という思考の流れになっていく。
 あるいはテレビの画面に定期的に露出、その後、政界に転じたタレントの支持率の高さの秘密も、実はテレビ媒体が持つ魔力のなせるわざであるという。テレビ時代の申し子ともいうべき彼らは、そうした効果をしっかり見極めたうえで、政界に転じてからもテレビ出演を積極的に心がけている。だれと名を挙げていわなくてもわかるはずである。
 そういう価値創造作用ないしはステイタス付与機能を持つに至ったテレビが一軒に一台どころか一人に一台というかたちで国民の生活を支配するシチュエーション、これこそ総選挙の結果と並ぶ程の大きな問題ではないか。
 私たちはテレビなど想像もできない時代に生まれ、テレビが登場した時代にはさいわい自分で考え学ぶ力を持つ頭になっていた。ところが、知らない間に時代が進んで、生まれたときからテレビがあったマルバツ世代が社会人となり、世の中の中堅どころを占めるようになった。さて、彼らは自分の頭で考え学ぶ力を持つのだろうか。
 私たちがいちばん知りたいのがその答えである。マスコミは選挙予測、内閣支持率調査といったことにばかり夢中になっていないで、自分たちの影響力を反省的に認識し、「製造者責任」の観点から、視聴者に与えている影響の実態こそ調査をすべきだ。そのためにも、巨視的な視点からテレビと視聴者の関わりという歴史上かつてない大変革に着目し、解明する義務がある。