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2010年12月 3日 (金)

アジアン・ロック通信<11>

Thy_fallen_kingdom_demo10

今年10月にHIRAXのオープニング・アクトのひとつとして大阪に上陸したシンガポールのはっちゃけスラッシュ・メタル・バンド、XANADOOが再び来日、12月25日に東京で行われる「OBSCENE RITUAL vol.19」という企画に参加する予定だ。まだ、彼らのライブを体験し
ていない方は是非、足を運んでいただきたい。

私はXANADOOの来日を目前に控えた今年の夏、メンバーにビールを届ける為、シンガポールへ飛んだわけだが、実はシンガポールの新世代スラッシュとして、もう一つ重要なバンド、THY FALLEN KINGDOMのライブを観るのも目的のひとつだった。

THY FALLEN KINGDOMはXANADOO同様、21世紀になって結成されたバンドではあるが、80年代のEXODUS、TESTAMENT、METALLICAを核に、JUDAS PRIESTやIRON MAIDEN等のヘヴィ・メタル然としたバンドなどからの影響を公言しており、メロディや曲展開
へのこだわりを感じる骨太のスラッシュ・メタルをプレイしている。また、彼らがこれまで発表した『All That Is Left』(2009年デビューEP)、『Undemocratic Society』(2010年デモ)で野太いながらもメロディを歌い上げているヴォーカリストはDaveというスイス人であり、いかにも欧州のメタルという雰囲気を漂よわせているのだ。何も情報を与えられずに聴いたならば、誰もシンガポールのバンドだとは思わないだろう。

さて、THY FALLEN KINGDOMに会うのは約2年ぶり、今回で2回目である。メインから外れた住宅街のような場所にある年季の入った小さなリハーサル・スタジオへ到着すると、メンバーはすでに機材の準備をほぼ終えていた。いつでも演奏を開始する事が出来る状態だったが、 少し違和感を感じ、よくよく確かめてみると、スイス人ヴォーカリストDaveがいない。話を聞けば、彼は『Undemocratic Society』のレコーディングの後、母国へ帰国してしまったということで、新たにAidilという人物が加入したとのこと。

この新加入のメンバーがどのような効果をバンドに持ち込んでいるのかが興味深かった。いざ、ライブが始まってみると、小柄ながらも無駄なく鍛えられた肉体を持つAidilのヴォーカルは、前任のDaveとはかなりタイプが異なっており、メンバーは「Law Edgeを加えてくれた」と言っていたが、確かに彼は、邪悪でエッジの効いた声を全身から絞り出すように吐き捨てていく。

やたらマッチョなドラマーMuhammadと、こちらも新たに加入したベーシストKelvinの安定したなリズムに、頭を振りながら細かなリフ・ワークをさらりと紡ぎ出すAkhbarとSuhaimiの
ギターのコンピネーションが生み出すサウンドとの相性も上々だった。観客が私だけという状況で、メンバーはリラックスしているというより、かえって緊張しているような部分もあったと思われるが、実際のプレイになんら問題ないことを確認できた。

変化自在のスピード、パワフルでスリリングな展開とメロディアスなギター・ソロ。そこに加わる邪悪なヴォーカル。80年代のメタルが持っていた雰囲気と要素を現代の技術で表現してみたとメンバーが言っていたが、当時からのコアなメタル・ファンも、新世代のスラッシュ・メタルから入ったファンもどちらも楽しめる楽曲を提供できるバンドだ。

まだ大きなアクションは見られないものの、XANADOOと共にシンガポールのスラッシュ・メタルを引率していくのはTHY FALLEN KINGDOMであることは間違いない。

                                                                           <小笠原和生>

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