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2010年10月22日 (金)

アジアン・ロック通信<8>

Meltgsnow_back_penace

その国土の狭さがそうさせるのだと思うが、シンガポールのバンドは積極的に海外でライブを行う印象を持つ。

ハードコア・パンクの大ベテラン、OPPOSITION PARTY、ヴェディック・メタルの先駆者であるRUDRA、闇の帝王として20年間君臨するIMPIETY、知的芸術家集団のTHE OBSERVATORY、スウェディッシュ・デスに影響を受けたBHELLIOM、そして、来日も果たす若手スラッシャーのXANADOO等がその代表例と言える。

そして、今回取り上げるゴシック的要素を持つメタル・バンド、MELTGSNOWもまた、海外へのアプローチを積極的に行っているバンドだ。

私が最初に彼らに出会ったのは2004年のタイだった。
バンドの結成は1999年で、2002年にアメリカでツアーを行い、ファースト・アルバム『Meltgsnow』を2003年にリリース。

その翌年に行われた海外でのライブだったので、バンドとしてもノっていたのだろう。取って喰われるのではないかと思わせるような、かなりワイルドなパフォーマンスで、観客はもとより、その他の出演バンドすらも圧倒していたことを鮮明に覚えている。

アメリカ・ツアーも成功だったと聞いていたが、彼らの演奏を目の前にして納得した。
ショウの後、彼らは、タイのファン(比較的女性が多かったように思う)に取り囲まれながら、「俺たちいつも主催者に"ステージを壊さないでくれ!"って注意されちゃうんだよね」と笑っていたけれど、私の記憶が確かなら、その時のショウでもマイクを振り回した挙げ句、ステージに叩きつけていたような、いなかったような・・・。

その後、彼らはシンガポール国内とタイをメインにライブ活動を行い、アルバムの制作もこの二つの国で進めていたものの、度重なるメンバー・チェンジと、それに伴う楽曲の書き直しで
、セカンド・アルバム『Black Penance』がリリースされたのは、2010年の夏過ぎとなった。

不慮の事態といえ、時間をかけて制作された今回の新作は、バンドのカラー・イメージとしての黒い不穏さはそのままに、より成熟したムードが漂う。これにはシンガポールの重要バンド
のひとつ、MEZA VIRSのCedricがエンジニアとミックスを、OPETH、AMON AMARTH、PARADISE LOSTを手掛けてきたJens Borgenがマスタリングを施したことも大いに関係している。

アルバムのリリースに伴うショウが行われ、その模様がYouTubeにアップされていたが、以前のパフォーマンスと比べて、近年の彼らは、ムード作りを大切にしていて、じっくりと自分たち
の世界へ観客を引き込んでいくスタイルへと変化をしてきているようだ。

特に今回、大きな成長をみせ、また、バンドの最大の特徴となっているのがヴォーカリスト、Lord Insanityだ。

彼は爬虫類系の声質でKing Diamondのようなヒステリックなスクリームを聞かせたかと思えば、モノローグのようなパート、ダーティなダミ声、時にはJames Hetfield(METALLICA)のような歌いまわし、そしてディープな声でゴシック調へと鎮めていく変化自在の声を操る。

先日、久しぶりに彼に会ってビールを飲んだが、父親になったこともあって、かなり落ち着いた、そして色気を兼ね備えた大人の男になっていた。音と人間の成長というのは、やはり密な
関係があるのだろう。
グラスを傾けながら、彼の声の成長について話題を振ると、King Diamondからの影響を明らかにしていたが、特別なトレーニングというのは行っていないという。ただし、ショウがあるときはお酒を控えて、なおかつステージ前に45分は発声練習を行っているということだった。

バンドは10月後半から11月にかけてオーストラリアへツアーに出る。世界でも名の知れたTHE ETERNALとの共演もする予定だ。

21世紀に入って、シンガポールのロック/メタルの成長が顕著に表れてきている。じっくりとシーンを眺めていると、この先、この国がアジアの中で重要な位置を占めることは間違いない
と思えてくる。

                                                                          <小笠原和生>

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