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2007年6月14日 (木)

横浜・明日への提言(30) 俺がトップだ、すべて俺に聞け

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横浜エフエム放送株式会社
代表取締役社長 藤木幸夫

(著者紹介:現在、藤木企業株式会社 取締役会長兼社長、 株式会社横浜スタジアム取締役会長、横浜港運協会会長、神奈川県銃器薬物水際排除推進協議会会長、神奈川県野球協議会会長、社会福祉法人希望更生会理事長、小さな親切運動神奈川県本部代表、がん医療と患者・家族を支援する会会長等の役職にあり、平成元年4月に藍綬褒章受章、平成10年11月に横浜文化賞を受賞。)

 政治・経済の分野を問わず部品から組み立てに至るまですべてを丸投げ他人任せにして「トップでござい」という姿が目立ってきた。組織が肥大化したことも原因の一つにあるのだろう。このようなことでは名のみの責任しか担えず、何かあったとき引責辞任するためのトップでしかなくなってしまう。それでよしとしている向きもあるようなので、ちょっと思い出したことを述べてみたい。
 私がトップという立場を強く意識し深く考えさせられたのは、ヨーロッパの港湾施設に出かけた二十代のときのことで、相手はロンドンのある荷役会社のスクラットンさんという社長だった。その人は車椅子に乗った白髪の老人で両側に屈強な若者が佇立していた。若い私は張り切って膨大な質問項目を用意していた。きちんとあいさつをすませてから社長にお願いした。私はおやじの会社に入る前は外資系の会社にいたから英語ができる。
「質問したい項目がいっぱいあります。あなたは社長だから聞くわけにいかない、どなたか各専門の担当の方を寄越してください」
「君は失礼なことをいうな。専門の方とはなんだ」
 スクラットン社長がいった。
「俺はこの会社の社長だ。すべてわかっている、俺に聞け」
 船会社との料金交渉のやり方、作業員の賃金体系から労務管理全般、安全衛生、営業関係にいたるまで、スクラットン社長は私の質問によどみなく次から次へと懇切丁寧に答えてくれた。
 これがトップのあるべき姿か・・・・。
 私は感激してカミナリに打たれたような思いだった。
 当時の私は創業者の二世で、入社間もないというのに「ワカ」と呼ばれ、将来はトップの座が約束されていた。しかし、スクラットン社長と会って帰国してから、そんな気分は消し飛んでしまい、自分から進んで現場に出、汗と泥でまっくろになって働いたし、人集めに東奔西走、南船北馬した。長年の経験を積んで仕事のことならだれにも頼らないでわかるという段階に達したとき、頭にひらめくものがあった。
 一人ですべてわかるようになると問題に直面したとき即座に答えを思いつくし、あたためていた問題意識にアイデアがすっと浮かぶようになったのである。
 これからの日本が必要とするトップはどちらのタイプだろうか。らくしてトップになるなら前者でもよいかもしれない。私は後者でやってきたから言及する立場にないが、特に若い世代のトップの人たちにはどちらがよいか真剣に自問自答して貰いたいものである。