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2007年1月14日 (日)

横浜・明日への提言(20) お先にどうぞ

20

横浜エフエム放送株式会社
代表取締役社長 藤木幸夫

(著者紹介:現在、藤木企業株式会社 取締役会長兼社長、 株式会社横浜スタジアム取締役会長、横浜港運協会会長、神奈川県銃器薬物水際排除推進協議会会長、神奈川県野球協議会会長、社会福祉法人希望更生会理事長、小さな親切運動神奈川県本部代表、がん医療と患者・家族を支援する会会長等の役職にあり、平成元年4月に藍綬褒章受章、平成10年11月に横浜文化賞を受賞。)

 正月の松飾りも取れて、世の中が活発に動き出してきた。私は元旦から歩いてミナトの関係の会社に出た。これは毎年恒例のことで、大晦日も元旦も、入院したとき以外は出社を欠かしたことがない。
 道々、私は歩きながら考えた。正月の間、本牧の自宅から北仲通の会社まで初詣の若者と数多くすれ違った。今の若者は男女に関係なくわが道を行く感じで歩くので、すれ違うたびに私が脇によけて道を譲った。だから、正月はいつもより時間がかかる。
 なぜ、こんな話を持ち出したかというと、若者の態度が傍若無人だとか、横浜は道路も歩道も狭いというようなことをいうためではない。確かに道は狭いし、だれもが好き勝手な歩き方をしたら、お互いに肩をぶつけ合って不愉快な思いをするだろう。だからといってモラルハザードだと叫んで批判したところで何の解決にもならない。不愉快な思いをしないですむように歩道を広げれば車道を狭め、税金の無駄遣いどころか世の中に弊害を押しつける結果になる。
 では何の対策もないのかというとそうでもない。
 昨年、FMヨコハマが発行する雑誌の対談企画に駆り出され「強い男の条件」について質問を受けたとき、そんなことが頭にあったのでとっさに「お先にどうぞといえる男だ」と答えた。それはこういうことだ。
 私の座右の銘は「して欲しかったら先にやれ」である。長幼の序も大人の面子も大事だが、モラルハザードの昨今、それだけでは「おまえが先に譲れ」「おみえこそ譲れ」で喧嘩になってしまう。だから、座右の銘がものをいう。「して欲しかったら先にやれ」が日常の心がけで「お先にどうぞ」は結果ということになる。狭い道でも譲り合うようになれば広くなる。物理的に広げなくとも心がけ一つで広げられるという手品のような解決策だ。強さの物差しは勝ち負けではない。私は自分でいった答えに満足した。どんなつまらない問題でもきちんと解決できる男が強いと思っているからだし、ましてや我先に勝ち馬に乗ろうとしたり、他を蹴落として勝ち組になろうなどというのは論外だ。
 私が小さな親切運動に関わってから何十年という歳月が過ぎた。大したことをやってきたわけではないが、これも座右の銘の実践の一つである。目立たないし、それをやったから世の中が劇的によくなるわけでもない。だが、空中の塵を核に取り込まないと美しい結晶を結べない雪と同じで、小さな親切、小さな心がけも、営々と繰り返していくうちに結晶を結ぶのではないかという夢がある。そういう夢を持つ、人生でこれほどの醍醐味はない。
 浜っ子のみなさんがどんな些細なことでもまず今からでもやれるようなことを日常的に心がけたら、横浜の未来はぐんと開けるだろう、これもまた私の大事な夢の一つだ。