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芥川賞受賞作 Feed

2016年7月29日 (金)

コンビニ人間

表紙 購入
村田沙耶香 著
文藝春秋
1,300円(税別)
ISBN978-4-16-390618-8

周囲から「異常」と見られているらしき自分を、世界の「正常な」部品にしてくれたのはコンビニだった…18歳から18年間、文字通り「コンビニ店員として」生きて来た独身の恵子は「普通の人間という生き物を装う」ために、世の中に対する不満でいっぱいの同年代の男性・白羽さんに、ある取り引きをもちかける。可笑しくて過激で大真面目、実は普遍的な問いがこめられた、著者のファン層を広げるであろう芥川賞受賞作です。

2016年2月 8日 (月)

死んでいない者

表紙 購入
滝口悠生 著
文藝春秋
1,300円(税別)
ISBN978-4-16-390412-2

10月のお通夜。地区の集会場に故人の子たちや配偶者、孫、ひ孫が集まっている。酒を飲み煙草を吸い久しぶりに話をし、近くの温泉や故人の家へ行く。彼らを遠近から映すだけでなくそれぞれの内面にも入って行き、そこに流れる時間とその奥にひろがる時間を自在に描写した、おおらかな空気感漂う群像劇。お通夜の会場にはいないけれど「死んでいない者」として存在する人物のエピソードも心に残ります。

異類婚姻譚(いるいこんいんたん)

表紙 購入
本谷有希子 著
講談社
1,300円(税別)
ISBN978-4-06-219900-1

お互いの顔が、お互いをまね始めた─?バラエティ番組から単純なゲームへ、そして揚げ物づくりに興味を移していく旦那の顔、専業主婦の「私」の顔。一心同体というのとはまた違う奇妙な同化感覚が、彼らの近所に住む老夫婦の「猫捨て」の顛末とともに語られます。童話的な結末が印象的な芥川賞受賞の表題作のほか、やはり夫婦の物語ながらまったく違う雰囲気の「藁の夫」など3つの作品が収録されています。

2013年7月18日 (木)

爪と目

表紙 購入
藤野可織 著
新潮社
1,260円(税込み)
ISBN978-4-10-334511-4

〈はじめてあなたと関係を持った日、帰り際になって父は「きみとは結婚できない」と言った〉…最初の一文でいきなり読者を立ち止まらせ、不安な世界に誘う第149回芥川賞受賞作。父の恋人に「あなた」という二人称を与え、父と「あなた」との3人の生活を緻密に、執拗に描写する「わたし」は3歳の女の子。幼女が神の視点で、大人の言葉遣いで語る不可思議さと恐ろしさを終始感じながら読んでいく先に、タイトルの『爪と目』が交錯するラスト、そして戦慄せずにはいられない最後の一文が待っています。

2012年7月18日 (水)

冥土めぐり

表紙 購入
鹿島田真希 著
河出書房新社
1,470円(税込み)
ISBN978-4-309-02122-5

パート主婦の奈津子は、四肢の不自由な夫とともに1泊5千円の区の保養所に泊まりに行く。そこはかつて裕福だった奈津子の家族が、かつて滞在したことのある、かつての高級ホテルだった。自分を蝕む浪費家の母と弟、夫の病気、そして結婚する前の生活を反芻する奈津子が、旅の終わりに手にしたものとは…妻の気持ちを推し量らない、無邪気で鈍感で人に好かれる夫の存在感に圧倒され、彼の病気の意味づけに唸らされます。第147回芥川賞受賞作。

2012年1月18日 (水)

道化師の蝶

表紙 購入
円城塔 著
講談社
1,365円(税込み)
ISBN978-4-06-217561-6

飛行機の中、銀色の糸で編まれた小さな虫とり網で人々が放出する「着想」を捕獲する実業家のエイブラムス氏、エイブラムス氏の話を人工言語で書いた作家友幸友幸、モロッコの古都フェズで刺繍を習う手芸家、友幸友幸を探す人物──らが織り成すロンド(輪)のような物語。ある人物はある人物と同一かもしれず、性別すら不明。これって誰? どういうこと? とクエスチョンマークがいくつも頭に浮かびまがすが、それらは最後に見たこともない美しい景色に変化します。第146回芥川賞受賞作。

2011年4月27日 (水)

赤頭巾ちゃん気をつけて

表紙 購入
庄司薫 著
中公文庫
620円(税込み)
ISBN978-4-12-204100-4

目指していた東大の入試が大学紛争で中止になり、宙ぶらりんになって(されて)しまった「ぼく」こと庄司薫クンの、1969年2月9日の朝から晩までを一人称で綴った青春小説のベストセラー。長年飼っていた犬が前の日に死に、足の親指の爪をはがし、女友達とけんかするというサイアクの始まり方をした一日が終わる頃、彼が得た、たどり着いた、もらったもの、とは?─たくさんの言葉を連ねて男子のやさしさや知性について深く考え、その考えと格闘する薫クンの真剣さがとてもとてもキュートです。

2011年2月 3日 (木)

苦役列車

表紙 購入
西村賢太 著
新潮社
1,260円(税込み)
ISBN978-4-10-303232-8

芥川賞受賞会見でのびっくり発言、そして全く作家っぽくないプロフィール。生活も性格も最下層の男、北町貫多(=西村賢太)の人生を一貫して書き続けてきた著者の作品は平成の私小説と言われていますが、読者に同情の代わりに嫌悪をもよおさせ、さらにそこから生まれる笑いを引き出す芸は超一級品です。この作品の貫多は19歳ですが「なんて駄目なキモい奴!」と心底思ったその瞬間、あなたの胸に貫多というキャラが棲み付き、ダメなこいつの話をもっと読みたいという欲求が生まれるかもしれません

2011年2月 2日 (水)

きことわ

表紙 購入
朝吹真理子 著
新潮社
1,260円(税込み)
ISBN978-4-10-328462-8

夢や思い出や回想の中に流れる、地層に宿る、インスタントラーメンができあがるのを待つ3分に存在する、時間というみえないもの。子どもの頃、葉山の別荘で姉妹のように毎夏を過ごした貴子(きこ)と7歳上の永遠子(とわこ)が25年ぶりに再会するというだけの、とてもシンプルな筋立ての話ですが、日々の生活に埋まっているあらゆる時間を発見させてくれる、清潔で美しい作品です。

2010年12月 8日 (水)

ブエノスアイレス午前零時

表紙 購入
藤沢周 著
河出文庫
462円(税込み)
ISBN978-4-309-40593-3

源泉で作る温泉卵と、社交ダンス向けの大ホールが売りの山間のホテル。降り積もる深い雪、身体に染み付いた硫黄の匂い、それに付随する仕事自体に倦んでいる従業員のカザマは、ダンスの団体客のひとり、目の不自由な痴呆気味の老女にかすかな興味を覚えて─「ブエノスアイレスは雪がさらに激しくなる」というラスト一行が痺れるほど恰好いい芥川賞受賞作。老女の意識と記憶に分け入っていくカザマが、彼女とタンゴを踊る場面はたまらなく官能的です。