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エッセイ・評論 Feed

2017年2月24日 (金)

プリズン・ブック・クラブ コリンズ・ベイ刑務所読書会の一年

表紙 購入
アン・ウォームズリー 著
向井和美 訳
紀伊國屋書店
1,900円(税別)
ISBN978-4-314-01142-6

受刑者たちと課題本について意見を交わす、塀の中の読書会。行動的で慈悲深い友人のキャロルに誘われておずおずと参加したジャーナリストの著者は、次第に彼らとの友情をはぐくんでいく。「自分の内面の奥深くに降りていかざるを得ない、読書という行為」は参加者に何をもたらしたのか。本が人を、その人生を変える可能性があるということを示したすばらしい記録です。

2016年12月30日 (金)

バンド臨終図巻

表紙 購入
速水健朗 円堂都司昭 栗原裕一郎 大山くまお 成松哲 著
文春文庫
980円(税別)
ISBN978-4-16-790759-4

サブタイトルは「ビートルズからSMAPまで」。1960年代から年代順に、バンドやユニット、アイドルグループの解散の経緯を網羅した資料的な意味合いもある1冊。お金、ドラッグ、恋愛、マネージャーとの齟齬、音楽の方向性の違いなどから生まれる(ときに泥沼の)崩壊への内部事情を読んでいくと、解散する方がむしろ自然なのではとすら思えてきます。191の濃密な人間関係の末路が詰まっています。

2016年10月21日 (金)

逃げろツチノコ

表紙 購入
山本素石(やまもと・そせき)著
山と渓谷社
1,200円(税別)
ISBN978-4-635-32015-3

1959年、豪雨のあとの京都の渓谷。藪の中から突然、太く短い蛇のような生き物が首元目がけて飛んできた!「そいつはツチノコちゅうてナ」と村の長老たち。山本さんのもとにはツチノコを探したいという男たちが結集。さて、見つけることができるのか…?土地の言い伝えや伝説の匂いが感じられる数々の目撃談、見切り発車的な生け捕り作戦、そしてメンバーのとほほな私生活。40年経って復刊された探索記、思いがけない面白さです。

2016年5月27日 (金)

翻訳できない世界のことば

表紙 購入
エラ・フランシス・サンダース 著
前田まゆみ 訳
創元社
1,600円(税別)
ISBN978-4-422-70104-2

「森の中で一人、自然と交流するときのゆったりとした孤独感」という意味をも つドイツ語の「Waldeinsamkeit」。スペイン語の動詞「vacilado」は「どこへ行 くかよりもどんな経験をするかということを重視した旅をする」という意味。 apple⇒りんご、のように1対1対応ではない(直訳できない)いろんな国や民族 の豊潤な52の言葉を集めた本。著者によるユーモラスで可愛らしいイラストも 魅力的です。「○も○び」など、日本語も4つ収められています。

2016年5月13日 (金)

上を向いて歩こう 奇跡の歌をめぐるノンフィクション

表紙 購入
佐藤剛 著
小学館文庫
710円(税別)
ISBN978-4-09-406242-7

もっと歌のうまい人に歌って欲しい、と作詞した永六輔は言った。あれでいいんだ、と作曲した中村八大は言った。坂本九の「斬新な」歌い方の背景にあったもの、アメリカでの大ヒットにまつわる謎、時代が求める音楽を供給した人々、そして歌われ続ける理由。永遠の名曲「上を向いて歩こう」を綿密な取材で掘り下げた愛情あふれる考察の書。まさに唯一無二の「奇跡の歌」だと思わされます。

2016年4月15日 (金)

少年の名はジルベール

表紙 購入
竹宮惠子 著
小学館
1,400円(税別)
ISBN978-4-09-388435-8

少女マンガの歴史に残る革命的名作『風と木の詩』を生み出した竹宮さんの、初期の頃を振り返った自伝です。大泉の長屋で共同生活を送った同年代の天才・萩尾望都さんに対する憧憬と嫉妬、プロデューサー的役割を果たしてくれた友人・増山さんの辛辣な激励、同性愛を扱った『風と木の詩』の発表が叶うまでの奮闘。編集者とのやりとりや読者アンケートの結果など、マンガが世に出るまでの舞台裏も含め、第一線を張り続けてきた人がどんなふうにあがいてきたかを知ることができる、勇気の出る1冊です。

2016年3月22日 (火)

アメリカの少年野球 こんなに日本と違ってた

表紙 購入
小国綾子 著
径(こみち)書房
1,600円(税別)
ISBN978-4-7705-0217-9

「母ちゃん、ばっちこーい!って、英語でなんて言うの?」…毎年メンバーが変わるシステム、上手な子ほど回数がこなせる練習、子どもに自信をつけさせるためならときに人間関係を犠牲にすることも厭わない親たちの姿。9歳の息子が参加したアメリカの少年野球での4年間を母親の目から描いた、成長記であり異文化体験記でもあるエッセイ。佐野洋子さんの息子さんの広瀬弦さんが表紙カバーの絵を手掛けています。

2016年3月14日 (月)

人生パンク道場

表紙 購入
町田康 著
角川文庫
1,500円(税別)
ISBN978-4-04-103819-2

具体的な対処法を丁寧に示していて、自分にはあまり関係のない悩みからでも得るものがあり、読み物としても面白い、満点の人生相談本です。女遊びがやめられないという悩みに対する回答の中の「遊びというご飯は、本気というおかずがあって初めて楽しいのです」という言葉に居住まい正さない遊び人がいるでしょうか。「昔の彼が忘れられない」人も「朝起きられない」人も「生え抜きの選手がFA宣言してもなぜ西武は引き止めないのか」と腹立たしく思っている人も、ぜひ。

2016年3月 7日 (月)

バイエルの謎

表紙 購入
安田寛 著
新潮社
550円(税別)
ISBN978-4-10-120286-0

かつて、ピアノを習う日本人誰もが最初に使っていた教本、バイエル。でもバイエルさんの伝記は世界中どこにもなく、詳しいことは何も分からない。彼は実在の人物だったのか?誰かのペンネームだったのかも?著者が6年以上の歳月をかけてたどり着いた事実とは…中盤、すこし専門的な内容も盛り込まれていますが、謎の人の経歴を突き止める過程のどきどき感は後半になるにつれ高まっていきます。あの懐かしいメロディが蘇って来る1冊。

2016年2月22日 (月)

猫といっしょにいるだけで

表紙 購入
森下典子 著
新潮文庫
590円(税別)
ISBN978-4-10-136352-3

野良猫が庭で5匹の子を産んだ。猫嫌いの母、仕事に行き詰まっているフリーランスの自分。2人暮らしのこの家では、かわいそうだけれど飼ってあげることはできない。とりあえず保護し、友人知人に相談。たくさんの人がやってきて、皆とろけるような笑顔を見せて帰ってゆく。やがて母娘の心にも、思いがけない変化が訪れて…人はとてもちいさなものによって日々生かされているのかもしれないと思わせてくれるエッセイ。生き物が与えてくれるぬくもりのかけがえのなさが伝わってきます。