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海外の小説 Feed

2017年3月24日 (金)

本を読むひと

表紙 購入
アリス・フェルネ 著
デュランテクスト冽子 訳
新潮クレ スト・ブックス
1,900円(税別)
ISBN978-4-10-590133-2

パリ郊外の荒地で野営生活を送る総勢18人のジプシーの3世代家族。学校に通っていない子どもたちに物語を届けるため、図書館員のエステールは車に本を積んで毎週彼らのもとへやって来る。人生のままならなさ、厳しさを知る家長のアンジェリーヌばあさんは、やがてエステールを娘のように思うようになり…お互いがお互いから受け取り与えたものを描いたフランスのロングセラー作品。温かな心の交流以上のものが感じられる小説です。

2017年2月10日 (金)

短くて恐ろしいフィルの時代

表紙 購入
ジョージ・ソーンダーズ 著
岸本佐知子 訳
角川書店
1,300円(税別)
ISBN978-4-04-791644-9

国民は7人いるのに領土は1人分しかない内ホーナー国を取り囲む大きな外ホーナー国の平凡な中年男フィルが、あれよあれよという間に内ホーナー国を迫害する独裁者になってゆく超ブラックな寓話。バカバカしさにともなうユーモアが細部にまで施されていて「なんじゃこりゃ」と笑いながら読んでいると「あ、こんなこと起きるわけないと思ってるから笑ってるんだ…」と気付き、笑った分だけ心底ゾッとさせられます。今、読むべき1冊です。

2017年1月27日 (金)

幸福な王子/柘榴の家

表紙 購入
オスカー・ワイルド 著
小尾芙佐 訳
光文社古典新訳文庫
880円(税別)
ISBN978-4-334-75347-4

〈この世の重荷はひとりの人間が負うにはあまりに大きく、この世の悲しみはひとりの人間が耐えるには重すぎるのです〉…人魚を愛するがあまり身体から魂を切り離し、海の者の世界に入って行った漁師、自分が身に付ける豪華で美しいものを作るのが貧しい人々だということを受け入れられない若き王。大人向けに訳された9つの童話、理不尽という言葉を知らなかった頃に読んだ方もぜひ再読してみてください。

2016年12月 9日 (金)

年月日

表紙 購入
閻連科(えんれんか) 著
谷川毅 訳
白水社
1,700円(税別)
ISBN978-4-560-09531-7

髪を焼くほどの太陽が照り付ける干ばつの年、72歳の先じいは畑に一本だけ芽を出したトウモロコシの苗を見捨てられず、村にひとり残る。相棒は痩せた盲目の犬、メナシ。自分と犬とトウモロコシを生き延びさせるため、ネズミと食料を奪い合い、水を得るためオオカミと戦う先じい。万策尽きたとき、彼がとった方法とは…心でメナシに話しかける先じいの言葉のたまらない優しさ。犬と老人の、これぞ絆の物語です。

2016年12月 2日 (金)

アルバート、故郷に帰る

表紙 購入
ホーマー・ヒッカム 著
金原瑞人+西田佳子 訳
ハーパーコリンズ・ジャパン
1,600円(税別)
ISBN978-4-596-55203-7

ウエストバージニア州の炭鉱町に住む若夫婦、ホーマーとエルシー。諸々の事情で2人は、ペットのワニのアルバートをフロリダ州へ戻すため車で千キロもの旅をする。銀行強盗に遭ったり靴下工場のストに巻き込まれたり映画に出演したり、という珍道中の果てに、愛らしく賢いアルバートと、さて2人は別れることができるのか…?著者が両親の若い頃の話を物語に仕立てた、思い切り笑えて泣ける冒険もの。夫婦小説としても読みどころいっぱいです。

2016年9月30日 (金)

すべての見えない光

表紙 購入
アンソニー・ドーア 著
藤井光 訳
新潮クレスト・ ブックス
2,700円(税別)
ISBN978-4-10-590129-5

ドイツ占領下のフランスで暮らす盲目の少女マリー=ロール、孤児院で育ったドイツ国防軍の技術兵ヴェルナー。接点のない2人を細くつないでいたのは、あるラジオ番組だった…伝説の宝石や精巧な街の模型などのキーアイテムをちりばめながら、時間と場所を行き来して語られる、戦争に翻弄された人々の運命と2人の邂逅。ロバート・キャパによる表紙写真が作中のある場面とシンクロします。泣くならぜひこんな小説で。

2016年6月10日 (金)

レモンケーキの独特なさびしさ

表紙 購入
エイミー・ベンダー 著
管啓次郎 訳
角川書店
2,200円(税別)
ISBN978-4-04-110485-9

ママが作ってくれたレモンケーキは、おいしいのに、うつろでからっぽな味がした…何かを食べるとそれを作った人の感情が分かる能力を得てしまった少女ローズ。寄り添ってくれたのは、無口な兄ジョゼフの親友・ジョージだった。母の浮気、ジョゼフの秘密、平凡に見える父、そしてこのやっかいな能力と共存していかなければならない、私。家族と自分の複雑さを見つめ続けるローズの語りに惹きつけられる長篇小説。もの悲しくも幻想的なある場面がいつまでも心に残ります。

2016年4月22日 (金)

夜中に犬に起こった奇妙な事件

表紙 購入
マーク・ハッドン 著
小尾芙佐 訳
ハヤカワepi文庫
820円(税別)
ISBN978-4-15-120085-4

近所に住むシアーズさんの犬が殺された。特別支援学校に通う15歳のクリスト ファーは、先生の助言を受け、犯人捜しの顛末を小説として書いてみようと決め る。勇気を出して近所の人に聞き込みをし、動機を推理するクリストファー。彼 の耳に入ってきたのは、知りたいのとはまた違う事実だった…数学の問題が図解 で出てくるなど、彼の頭の中を読むことの面白さとストーリー展開の両方に惹き つけられます。でこぼこの部分が残りつつのエンディングもすばらしい、舞台も 有名なベストセラー。

2016年3月28日 (月)

ムシェ 小さな英雄の物語

表紙 購入
キルメン・ウリベ 著
金子奈美 訳
白水社
2,300円(税別)
ISBN978-4-560-09042-8

スペイン内戦でベルギーに疎開してきた8歳の少女カルメンチュを引きとったムシェ一家。彼女は家族に幸福な時間をもたらし、長男のロベールは結婚後、生まれた娘にカルメンと名付ける。やがて反ナチ運動に加わったロベールは強制収容所に移送され、それから数十年後、カルメンは父の足跡をたどり始める…ノンフィクションとフィクションを混ぜ合わせる手法で登場人物の心情をも描き出した「ごくありふれた人であり、英雄でもある人」の物語。著者ウリベさんがなぜこの作品を書いたのか、その理由にも胸が熱くなります。

2016年2月29日 (月)

チップス先生、さようなら

表紙 購入
ジェイムズ・ヒルトン 著
白石朗 訳
新潮文庫
400円(税別)
ISBN978-4-10-206203-6

祖父、父、息子と、3代に渡って教えた学生、新しい考えを持った聡明で美しい妻、若い校長との齟齬、教室のすぐ外で繰り広げられた戦争…人生の夕暮れ時、老チップス先生は約60年間の教師生活を振り返る。平凡に見える人の人生に何があったか、という物語にふさわしい抑制された文章、構成。先生の英国紳士らしいふるまいにときに笑いを誘われながらも、しみじみとした気持ちにならずにはいられません。