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2016年8月

2016年8月26日 (金)

拾った女

表紙 購入
チャールズ・ウィルフォード 著
浜野アキオ 訳
扶桑社
950円(税別)
ISBN978-4-594-07507-1

場末のカフェで働くハリーは、泥酔して店にやって来たブロンドの小柄な女性ヘレンと恋に落ちる。手元にあるのは200ドルだけ。アル中のヘレンと、やはり酒を飲まずにはいられないハリーの暮らしはたちまち行き詰まり、2人は死を決意するが…60年以上前に書かれた哀しい恋の物語。読後もう一度ページをめくると〈あなたとあたしは同類なんだし、そういうのってなんとなくわかるものなの〉というヘレンのなにげない台詞などいくつもの場面が、初読のときとは違う「哀しさ」で迫ってきます。

2016年8月19日 (金)

エスカルゴ兄弟

表紙 購入
津原泰水(つはら・やすみ)著
角川書店
1,650円(税別)
ISBN978-4-04-103252-7

出版社を突然リストラされ、立ち飲み屋の料理人という役目をあてがわれた27歳・編集者の尚登。店の長男で写真家の秋彦はフレンチへのリニューアルを決めており、三重県の養殖場から最高級エスカルゴを仕入れる手筈を整えていた。尚登は、魅力的なエスカルゴ料理を出すことができるのか?…癖のある人物たち、うどんをめぐる三角関係に笑わされ、繰り出されるおいしそうなメニューの数々に興奮せずにはいられない!手練れの作家のもてなしが存分に受けられる一作です。

2016年8月12日 (金)

美しい距離

表紙 購入
山崎ナオコーラ 著
文藝春秋
1,350円(税別)
ISBN978-4-16-390481-8

末期がんの妻の看病をしている40代の夫。未来はもうあまり残されていないが、明るく、ただ毎日を暮らしたいと思っている。自答できない自問が次々に生まれ、「他人の物語」をときに押し付けられたりもする。そして妻は、蓮の花が咲く時期に、その「固有の生」を閉じる─〈近いことが素晴らしく、遠いことは悲しいなんて、思い込みかもしれない。遠く離れているからこそ、関係が輝くことだってきっとある〉─近しい人の死に、新たな視点をくれる作品です。

2016年8月 5日 (金)

一投に賭ける 溝口和洋、最後の無頼派アスリート

表紙 購入
上原善広 著
角川書店
1,600円(税別)
ISBN978-4-04-102743-1

〈毎日「火事場の馬鹿力」を無理やり出せば良いだけのことだ〉…1989年、当時の世界記録にほんの数センチまで迫る記録を出したものの、その後忽然と陸上界から姿を消したやり投げの選手、溝口和洋。彼の一人称というスタイルで書かれた、18年に渡る取材が結実したノンフィクションです。自己流のトレーニングのすごさに圧倒されるのは、競技者本人にしか分からない、言語化しづらい感覚をここまで聞き出して「読める」ものにした著者の功績。あとがきも感動的です。